スター・ウォーズを吹き替えで観るべきではない理由

スター・ウォーズを吹き替えで観るべきではない理由

かつて戸田奈津子の訳が批判されまくっていたことが懐かしい今日このごろ。DVD・ブルーレイで大量の字幕修正が行われたので、もはや彼女の迷訳をネタにして酒を呑むこともできなくなってしまいました。そこで、かわりに今回は吹替版について触れてみたいと思います。

とはいえ、実は吹替版と言ってもTV放送版など含めるとかなり多くのバージョンが存在します。ひとまずこの記事ではDVD・ブルーレイ・デジタル配信版で共通して配信されている、最も普及しているバージョンを対象とします。この吹替版、エピソード4~6については、一部ブルーレイでセリフが追加収録されていますが、基本的にはVHS時代から同じです。エピソード1~3が公開され、エピソード4~6のセリフの意味合いも若干変わってきたこともありますし、そろそろ新しい吹替版を作っても良い頃合いではないかという気もします。

というわけで、新しい吹替版作成への期待を込めて、今の吹替版のどこが良くないのかについて、ざっくりまとめてみたいと思います。

※もちろん、吹替版は口語として自然に、口の動きにあわせて訳す必要があるので、完全に正確な訳はできません。したがって、ここではあまり細かすぎるツッコミは避けます。キリがないので。

※この記事作成時には「フォースの覚醒」は公開されていないので、「フォースの覚醒」の吹替版の良し悪しについては一切触れません(触れられません)。

その1 スター・ウォーズ特有の用語が別の言葉に置き換えられている

たとえばエピソード4~6の吹替版には「ロボット」という言葉が何度も登場しますが、スター・ウォーズの世界では「ロボット」のことを「ドロイド」(droid)と呼びます。
同じくエピソード4~6の吹替版で登場する「ワープ」という言葉も、本来は「ハイパースペースにジャンプ」(jump to hyperspace)あるいは「光速にジャンプ」(jump to light speed)と表現します。
また、「ナーフ飼い」(nerf herder)といったスター・ウォーズの世界特有の侮辱表現も、単に「恥知らず」と訳されていてしまっています(まあこれは字幕版でも「オタンコナス」となっているのですが……)。
このように吹替版では、スター・ウォーズの世界独自の言葉がより一般的な言葉に置き換えられてしまっているのです。

その2 標準とは異なる訳

たとえばエピソード4~6の吹替版では lightsaber を「ライトサーベル」と呼んでいます。サーベル? オランダ語ですか? 普通、みんな「ライトセーバー」か「ライトセイバー」と呼んでいますよね。
細かいところで言うと、「帝国の逆襲」(エピソード5)で帝国士官が X-Wing を「X翼」(エックスよく)と呼んでいますが、「Xウィング」で良いじゃないかと。
そんな感じで、ちまちまと現在定着している訳とはズレている部分があります。

その3 意味が違う

これが一番大きいです。
たとえば「シスの復讐」(エピソード3)でメイス・ウィンドゥが「貴様の運命は元老院が決める。」(The Senate will decide your fate.)と言ったあとパルパティーンは「元老院はこの私だ。」(I am the Senate.)と返し、それに対してメイスは “Not yet.” と言います。この訳が字幕版では「まだ違う」なのですが、吹替版では「もう違う」となっています。ここは意味的には、字幕版の「まだ違う」が正しいのです。前作で非常時大権を得て以降、どんどん権力を拡大していくパルパティーンは、このまま最高議長の座に座り続ければやがては元老院それ自体と同じ権力を持つことになる。でも「まだ違う」、ここで私が止めるから……というセリフなんです。

また意味が変わってしまっているものとして、一番ひどいとのは、「ジェダイの帰還」(エピソード6)でアナキン・スカイウォーカーの最後のセリフです。
なんと吹替版では、 「妹にも伝えてくれ…おまえが正しかったと。」(Tell your sister…you were right.)を「娘に伝えてくれ…愛していたと」と訳しているのです。そんなことまったく言ってないんですが……。

余談 オープニングロールが日本語になる

DVDやブルーレイで吹替を選択するとオープニングロールが日本語になるんですよね……。これがダサい!
ちなみに「帝国の逆襲」の劇場公開時にはSTAR WARSの文字まで日本語になっていて、非常に評判が悪かったとかなんとか……。
昔(VHSのころまで)は、文字は英語のまま、日本語音声で読み上げてくれていたんですよね。懐かしい。

結論

エピソード4~6の吹替版の訳はエピソード1~3で大批判を受けたあの戸田奈津子の字幕より遥かに質が低いです。
スター・ウォーズを観るときは吹替版は避けましょう。